イエ・ルポ 2

「イジメの標的になりかけていた私を救ってくれたクラスメイトに」
by id:TinkerBell


私は引っ込み思案で、人とコミュニケーションすることを恐がる子供でした。
中学生になってもそれは変わらず、暗い、嫌な存在として扱われていました。


そんなことじゃいけない、自分から友だちを作ろう。
そう決意してまずあいさつからはじめてみることにしました。
数日、私の努力は成功しているように思えました。
私にもちゃんと、人とコミュニケーションが出来るんだと、ちょっと自信がついてきました。
ところが…。


今までは嫌われていても、誰とも接触しない無害な存在だからよかったんです。
土曜、日曜と間が空いて月曜日。
学校に行ってみると、誰も私に近付いてくれなくなっていました。
あいさつをしたくても、まるで磁石の反発する極同士のように、みんなするりと逃げてしまいます。
最初はわけがわかりませんでした。
でも机に座って、すぐわかりました。
机の中に、気持ち悪いという意味の短い言葉が書かれた手紙が入っていたんです。


これからいじめられる、と直感しました。
不安な気持ちが胸に重くのしかかってきて、
貧血になったみたいに頭がクラクラして、目の前に星のようなものが走りました。
その直後に、私はこらえきれない乗り物酔いのような気持ち悪さに襲われて、少し吐いてしまいました。
クラスのみんなが一斉に音を立てて後ずさりしたのがわかりました。
あとはもう意識がもうろうとして、椅子に座っているのか床に倒れているのかもわからなくなりました。


しばらくして私を抱き起こしてくれた人がいました。
中学生なのに髪を少し染めている、ちょっと近付きがたいタイプの女子でした。
「そんなやつに構ってると、あんたまで嫌われるよ」
という声が聞こえました。でもその人は、
「ふざけんな」
と言いながら、私の背中をさすってくれていました。
その人は机の中に入っていた紙を見て、
「お前らこのクラスにイジメを持ち込むつもりか」
というようなことを強い口調で言ってくれました。
「このあたしの目の前でイジメを通らせたらあたしの格が下がんだよ、それでもこいつをいじめたいやつは前に出ろ」
この一言で、私は卒業まで、全くいじめられることなく過ごすことができました。
感謝しても感謝しきれません。
それに何も恐れず思ったことを貫き通せるこの強さ、憧れます。
しかし私はと言えば、その日はついに体が辛くてたまらなくなって早退。
翌日も欠席とぼろぼろでした。
やっと登校できても今まで以上に人と接するのが恐くなっていて、
あんなに恩を受けたことのお礼も言えない私になっていました。
そしてそのまま卒業を迎えてしまいました。


私は高校入学を機会に、一生懸命自分を変えようと努力しました。
一人でもいいから友だちを作りたい、
それが無理でも、少なくとも周囲を不快にさせない普通の人になりたいと思いました。
その結果、たくさんのすばらしい友だちに恵まれて、
信じられないくらい幸せな高校時代を過ごすことができたんです。
でもそれは、そんなふうに自分を変えたいと本気で思えたのは、
あの時私を助けてくれたあの人に、一言お礼が言いたかったから。
言えなかったお礼を言える勇気がほしくて、自分を変えてみたくなったんです。
でも、中学卒業から今日まで、なぜかずっと会えずにいます。
あの時、あの人がいてくれたから、今の私がここにいます。
本当にありがとう。感謝してもしきれません。