イエ・ルポ 2

「幼馴染みの君に」by id:watena


私達はまるで兄妹のようにして育ちましたね。双方の両親の仲がとてもよく、まるで一つの家庭のように、二つの家庭が溶け合っていました。
私達は何をするのも一緒でした。一緒に遊び、一緒に昼寝をして、ご飯も一緒に食べました。一緒に絵を書き、一緒に本を読み、そしていつも私達は手をつないでいました。手をつないだまま一緒にトイレに入ろうとして、親たちに大笑いされたこともよくありましたね。ここだけはどんなに仲良くても別々なんだよ。そう言われて、なぜだろうと頭をひねる私達でした。
やがて私達は、同じ幼稚園から、同じ小学校へと進みました。小学生になると男は男同士、女は女同士と別れてしまいがちですが、私達の友情は、卒業するまで変わりませんでした。冷やかされても何を言われても、私達は最高の親友として共に六年間を過ごしました。
しかし中学生になって、様子が変わってしまいました。私達は同じ中学に進学し、相変わらずの無二の親友ぶりを発揮していた…はずでした。しかし、君はいつのまにか、とても綺麗になっていたのです。君のことを好きだという男子が現れ、私は君を異性として意識するようになりました。
こうなってしまうともう、今までのようには自然に接することが出来ません。私の態度は不自然になり、それが君を苛立たせました。もうわけわかんないよ、なんでこんなになっちゃったのかな。君のこんな言葉が、私達の心の通じ合う会話の最後でしたね。家同士の付き合いも昔ほどには頻繁でなくなっていましたから、それからの私達はどんどん距離が離れていってしまいました。
それでも君は、もう二人会うこともなくなっていた高校卒業まで、欠かさずクリスマスカードを送り続けてくれましたね。そんな優しさに、せめてカードの返信で応えることができていたなら、私達はもっと違っていたかもしれません。でも私にはそれすらも出来ませんでした。おそらく理由は嫉妬心です。恋愛感情とは違います。しかし、兄妹のように過ごし、自分の半身のように思っていた無二の親友が、他人の彼女という形で奪われる。そんなことは考えただけでもやりきれませんでした。そういう嫉妬です。
こういう気持ちは、兄妹のように育った君にこそ、率直に打ち明けて相談すれば良かったんだと、今ならそう思います。しかしあの時はそんなことは考えられもしませんでした。もう一度君と、二人の合言葉を叫んでみたい。それが私の願いです。心が通じ合わなくなったその日から今まで、ずっとそう思い続けています。言いたくても言えなかった言葉、それは二人向かい合って拳を真上に突き上げて「ゴー!!」と叫ぶ、あの二人の合言葉です。