イエ・ルポ 2

「庭で育てたカボチャでパンプキンパイ」by id:YuzuPON


お寺のおしょさんがカボチャの種を蒔きましたベンベン。「ねぇ、これを蒔いたら芽が出るの?」「さぁ、種として熟しているかどうかわからないけど蒔いてみる?」「うん!」というようなやり取りをして料理中のカボチャの種をもらいました。ちょうど今ごろの、春の始まりの時期でした。
その時のカボチャは煮付けになっていました。子供に煮付けは、あまり面白くありません。「ねぇ、カボチャってパイとか作れるんだよねぇ」「手間がかかるけどね」「もしこの種が実ったらパイ作ってくれる?」「実ったらね」。約束しました。


適当に蒔いておいたら、なんとちゃんと芽が出ました。父に教えてもらいながら、親蔓と早く出た子蔓1〜2本をだけを伸ばしていくように摘芯しました。元気良く育って花が咲いたので、また父のアドバイスで人工授粉のまねごともやってみました。カボチャの受粉は朝7時ころの時間を見計らって行います。雄花の花粉を雌花につけて、わくわくしながら学校に行きました。まるで帰ってきたらもう立派なカボチャが実っているような気がしました。
カボチャの収穫は、開花後1ヶ月ちょっとくらいです…が、あんなに愛情を注いで手間をかけたのに、いい実はひとつも取れませんでした。がっくりしていると、父が教えてくれました。
植物の品種改良というのは難しいけれど、ある特徴とある特徴を掛け合わせた一代限りの雑種ならわりと作りやすい。お店で売っているカボチャはたいていそうやって作られている。でもそうして作られたいい特徴が子供である種に受け継がれるとは限らない。たいていの場合受け継がれない。このカボチャもそうだったんだねと。
がっかりした私に、翌年父が、これならおいしいカボチャが育つはずだぞと、ちゃんとした種を買ってくれました。もう二年目なので、育て方は慣れています。自分で摘芯も人工授粉もして、今度は本当にいい実が取れました。観察日記も付けました。
取れたカボチャのいくつかは煮付けや天麩羅になりましたが、ついに念願のパンプキンパイも作ってもらえました。私はパイというと三角に切られた物か、マックやミスドで見る一人サイズの物しか知りませんでした。しかし作ってもらったパイは大きな丸です。子供にとっては、一瞬これは何という食べ物なんだと叫びたくなってしまうようなカルチャーショックでした。全部一人で食べていいよと言われて食べ始めましたが、とても一人では食べ切れませんでした。でもおいしかったです。二年がかりで育てたカボチャでしたから、感激もひとしおでした。
それからもしばらく、カボチャのマフィンや、カボチャのプリンなどのおやつが登場しました。どれもおいしくて、この年は夢のような年でした。父が私の育てたカボチャの天麩羅を肴にビールを飲んでいたのもいい思い出です。