「冬でも緑のシダの楽しみ」by id:YuzuPON


お正月飾りにウラジロが使われることからもわかるように、シダの仲間は冬の貴重な緑です。シダの仲間は季節ごとの姿の様子から
・一年中葉が枯れない常緑性
・冬に葉が枯れる夏緑
・夏に葉が枯れる冬緑性
に分けることができます。
冬だけ緑の葉を茂らせる冬緑性というのはとても珍しいと思いますが、こうした種類のシダの多くは落葉樹林帯の木の幹や岩場を中心に生える性質を持っています。おそらく木々の葉で光が遮られる季節は葉を落として休眠し、木々が葉を落とす冬に葉を茂らせてせっせと光合成を行うスタイルを手に入れたのだと思います。
胞子で増えるシダは原始的な植物のように思いがちですが、植物の歴史を見ると、植物が最初に水中から地上に上がってきたのは、暖かい地域での出来事だったようです。それから長い年月をかけて寒さに強くなっていき、次第に高い緯度にも広まっていったわけですが、そんな植物が手に入れた寒さに耐える方法の一つが「落葉」でした。
ところが冬緑性のシダはその逆をやってのけるのです。これはもしかして植物界の最も進んだ画期的な形態なのかもしれません。シダ、恐るべしです。
そのほか、シダ類にはお正月飾りに使われるウラジロをはじめとした一年中葉が枯れない常緑性の種類がたくさんあります。一部の種類は観葉植物としても人気がありますが、やはり楽しいのは野山に出て探してみることでしょう。シダの仲間は雪深い地域にも生えています。数日晴れの日が続いて斜面の雪が落ちるとシダの緑が顔を出す、などということも珍しくありません。日本中で見られますから、ぜひ探してみてください。
なお、シダの仲間には、葉っぱの裏側にビッシリと虫の卵のような物が付いている場合があって、げ、気持ち悪い、などと思わせる物がありますが、それは胞子嚢と呼ばれる繁殖に欠かせない大切な物ですから、気持ち悪がらないであげてくださいね。冬の日にシダを探して歩くフィールドウォッチングも楽しいと思います。機会がありましたら、ぜひやってみてください。


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