イエコト・ミシュラン

「初物イベントで嫌いな物もご馳走に」by id:TomCat


わが家では初物を頂く時の特別なイベントがありました。といっても、単に東を向いて笑いながら食べるというだけですが、この初物イベントは、家族全員が揃った時にするのが原則なんです。だからとても特別で貴重な物というイメージが、いやが上にも盛り上がりました。


ここにうちの親は、うまいこと、子どもが嫌いそうな食材を持ってきたんです。どんな物でも探すと初物というのはある物で、たとえばニンジンなんかはだいたい通年出回っていますが、徳島産は主に春から夏、千葉産は冬から夏、北海道産は秋、そして埼玉、茨城産は主に冬といった感じになっていますから、産地を限定すればちゃんと初物があるんですね。


私は東京ですから、今の季節なら、埼玉県産あたりのニンジンを持ってくるとほぼ初物になります。


「ほーら、今日のニンジンはいつもとちょっと違うんだよ、今日のニンジンは初物なんだ、シチューにしたよ、おいしいよー、初物だからお父さんが帰ってくるまで待とうね」


この最後の一言「初物だからお父さんが帰ってくるまで待とうね」で、いつものニンジンがとてつもない貴重品になってくるわけです。もう子供は、早くそのニンジンを食べてみたくてたまらなくなってきます。


そんな気持ちが最高潮に達した時、家族揃ってニンジンを口に入れて、東を向いてモグモグモグ、おいひ〜、ニコッ、なんてやってごらんなさいって。もう、ニンジンというのはこの世で一番美味しい食べ物なんだと言われても、何の疑いもなくそれを受け入れてしまうくらいの気持ちになっています。


うちはとにかく何でもこれでした。漬け物なんかも、子供は普通あまり好まないと思いますが、うちでは初物として入手した野菜を糠漬けにして、漬け物でも初物を祝うというのをやっていましたので、その年最初の大根が漬け上がったりするの、楽しみでしたね。


大人の好き嫌いも、初物や旬に目を向けてみると、ずいぶん変わってくると思います。大人の場合は特に、本当に美味しい物が豊富に出回る旬に注目してみるのがお勧めです。


たとえば私は、嫌いというわけではありませんでしたが、東京人なのに、なぜか江戸前の食材として有名なシャコを、あまり好まなかったんです。ところが去年でしたか、イエはてなでシャコの旬というのを知って、突然シャコが大好物に変わってしまいました。寿司ネタはもちろん、煮付けてもから揚げにしても旨い旨い。旬という貴重な季節に食を楽しむ。この気持ちひとつで、嫌いな食べ物なんて無くなってしまうと思います。


とにかく、食材に対する新たな価値観が一つプラスされていくだけで、嫌いが好きに転ずることは多々あると思います。色々な食べ物の初物の時期や産地、旬の時期や産地を調べて、まずは蘊蓄を貯めていってみてください。