イエコト・ミシュラン

「好き嫌いを作らない三原則」by id:tough


以前、好き嫌いについて母と話し合ったことがありました。私には全く好き嫌いがないので、それはなぜかと訊ねたのです。母の答えは明確でした。
それにはお祖母ちゃん直伝の三つの原則がある。一つは美味しいと自信を持って食事を出すこと。二つ目は出来るだけ多彩な食材を使って食事を作ること。三つ目は食卓をいつも楽しくしていること。これが好き嫌いを作らない三原則なのだそうです。
まず第一番目の美味しいと自信を持って食事を出すことについては、母はためしに子供の私に、見た目のイメージと食感の特殊さで好き嫌いが大きく別れるホヤを与えてみる実験をしたそうです。たしかに幼いころ、そういう記憶がありました。調理前のちょっとグロい姿も見せられました。でも、美味しいわよ、食べてみる?と自信を持って笑顔で与えられると、私は喜んで食べて、美味しいと言ったそうです。おかげで今でもホヤは大好物です。
それを見た父が面白がって、後日クサヤの干物を幼児の私に与えたそうです。うまいぞ、めったに食べられない貴重品だぞと言われて一口もらって、あの独特の強い臭気も何のその、私はもっとくれとねだっていたそうです(笑)。
子は親に全幅の信頼を置いていますから、親が本当に美味しそうに笑顔で勧めてくれる物なら、子供は何でも食べるはずです。子供は、固い物、かみ切れなくて飲み込めない物、口に入れるとパサパサする物などが苦手ですが、それは日頃からよく噛むことを習慣づけていれば問題はなくなります。
二番目の出来るだけ多彩な食材を使って食事を作ることについては、少ない食材しか使っていないと特定の好き嫌いが目立ちそれが固定してしまう、毎日のように違う素材を使って食事を作るようにしていれば一つ二つ嫌いな物があっても目立たない、そのうち本人も食べられなかったことを忘れてしまう、嫌いという感情が固定しないので次は食べられるようになる可能性がある、ということだそうです。また多彩な食材の利用は、食べず嫌いを防止する効果もあるようです。
三つ目の食卓をいつも楽しくについては、たとえ完食したとしても無理矢理食べさせられたような食事は身にならない、それなら楽しく偏食しながら食べ残す食事の方がずっとまし、というのが祖母のポリシーだったのだそうです。偏食があればあるほど、残す数や量が多ければ多いほど食卓を楽しくして、食べる喜びで身に付くものを補うように考えた。それが祖母の栄養学だったそうです。
この三原則のお陰で、私は全く好き嫌いが無く育ちました。食べず嫌いについても、食べられるとわかっているものはまず食べてみようという興味の方が先に立つ性格になっていて、食べたことがないから食べられないということがほとんどありません。この性格は、旅先での楽しみを本当に広げてくれていると感謝しています。