「一人ひとりに作ってくれた、おばあちゃんの“はんちゃ”」

「一人ひとりに作ってくれた、おばあちゃんの“はんちゃ”」by ハザマ

私が物心ついた時にはもう母方のおばちゃん一人しかいなかったのですが、そのおばあちゃんの一番の思い出といえばお手製の「はんちゃ」です。はんちゃとは、冬に家で着る半纏、綿入れのことなのですが、これが方言なのかおばあちゃんの造語なのかは不明です。何しろ、レジのことをゲジ、マカロニのことをマカノリンと言って一生通した人ですから、もしかすると間違い語かも知れませんが、とにかくおばあちゃんと私たち家族や親戚一同の間では「はんちゃ」でした。
今でもよく売られている長袖の綿入れと同じようなカタチですが、おばあちゃんの手作りのはんちゃは、あまり厚ぼったくなくて軽いのに、とてもあったかかった(^^)。うちの家族を含めて、親戚じゅうみんなのはんちゃを縫うのがずっとおばあちゃんの役目だったんです。おチビさんには小さいの、背高のお父さんには袖も着丈も長いもの…と、一人ひとりの体に合わせて丹精込めて作ってくれました。ほとんどは着なくなった昔の着物をほどいて。うちの母がかつて普段に着ていたウールの着物なども、みんなはんちゃにしてくれました。どこかがほつれたり傷んだりしたら、せっせと修繕も。なので叔父や叔母、いとこたち、親戚も全員、常に身丈にぴったりの自分専用の「マイはんちゃ」を持っていて、団欒の時も、受験勉強の時も、風邪引きの時も、一人暮らしの時も、いつもこれを着て冬を過ごしてきたわけです。小さい頃からなので当たり前に思っていましたが、あれはおばあちゃんのあたたかな見守りだったんですね。おばあちゃんは、娘や息子にも孫たちにも「みんなに同んなじようにしてやるけんのう」といつも言っていました。
7年前におばあちゃんが亡くなってからは作ってくれる人もなく、今は思い出としてしまってありますが、今も寒い冬がくると思い出して恋しくなるおばあちゃんのはんちゃ。ミシンではなくて針仕事が好きで、いつも誰かのためにチクチクと部屋で縫い物をしていたおばあちゃん。その背中も今は優しい思い出です。


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