#002 「内田百輭の泥棒さん向け貼り紙作戦」

内田百輭の泥棒さん向け貼り紙作戦」by ハザマ

私がこれまでで一番記憶に残っている「ナルホド防犯対策」は、大正生まれの文人内田百輭の随筆で読んだ泥棒さん向け貼り紙の話です(『百鬼園先生言行録』)。
それは百輭先生が、三代続けて泥棒に入られたという借家に引っ越してきた時のこと。「電燈を夜通しともしっ放しにして寝る」「憚りの電気も夜通し点しておく」くらいではまだ心配なので「その次に、こう云うことを思いついた。余り脊の高くない、往来止めの制札のような物を二つ三つこしらえて、その表に、〈泥棒入口〉と書いたのをお勝手の内側に建てておく。又指ざしをした手の絵を描いて、〈泥棒さんこちらへ〉と書いた道しるべを、お勝手から茶の間へ這入る障子の脇に建てておく。その他〈泥棒通路〉〈泥棒休憩所〉などと云うのも造って、それぞれ適当な場所に置いてもいい」。これには家の人もあきれはてたとか。また他にも「私は雨戸の鴨居に近い辺りの合わせ目に一本ずつ杉箸を挟んで、その上で無理に雨戸をぐいぐいと押しつけて戸締りをした。戸と戸の間に挟まっている杉箸には、石鹸入れや、缶詰の空缶や、鋏などを紐でくくりつけて、ぶら下げた。丁度その真下のところにバケツと金盥を伏せて、上からそう云う物が落ちて来たら大変な音がする様な仕掛にした」。これは何度も実験したと書かれてあって、まるで今読むとお笑いコントのような仕掛けだけど、百輭先生は大真面目だったようです。
現代のセキュリティシステムがまだ導入されていない家では、こんな人力防犯作戦もアリかも!?

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